時効援用は当然!という理由


貸金業者が裁判所に訴えでれば確実に勝つことができる借金の請求を、遅延損害金が元金を上回るほどまで放置したのを請求するのはどうなんでしょう。元利金は実際に借りた金額の倍以上になっているわけです。借主に支払う義務があるのはもちろんですが、貸主も横着していたと言えるのではないでしょうか。

時効制度というのはそういうもののためにあるものと思っています。「権利の上に眠るものは保護に値せず」という法格言がありますが、時効が完成するほど眠りこけていた債権者を保護する必要はないということです。

そして放置されて膨らんだ借金を、バルクセールで元金の6~7%ほどの値で買取って、借主に満額の支払いを求める貸金業者はどうなのか。消滅時効が完成した後の借金であれば、回収の見込みが薄く、買う側は買い叩くことができるわけです。こういった業者に対し、消滅時効を援用するのに躊躇することは何もないように思うのです。

借金の支払いが滞ると、最初は貸し主から返済の督促が来ますが、そのうち借金の支払い先が別会社になることがあります。支払い先が変わるのは様々な事情がありますが、滞納の末のことであれば、不良債権の処理として、サービサー等に借金を売られたためかもしれません。この際の売値は当然、借り主への請求額より安いものになっています。場合によっては数%ということも。

買い叩いた借金で、元利金を含めた全額を顧客に請求するわけです。もし時効が完成しているとすれば、それを利用することになんの遠慮が必要なんでしょう?

と、私は思っています。

 

貸した方は案外、返ってこないとわかっている。 ~貸倒引当金について~


a1180_001396「借りたものは返さねばならない」というのは正しいと思いますが・・・貸した方は意外と事実を直視しています。貸した方にとっては、お金が返ってこないことは想定の範囲内です。

貸した方(貸金業者やクレジットカードを扱う信販会社)は貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)を積んでいます。このお金は借主からお金が返ってこなかった場合に、このお金を代わりに返済に充てるというものです。貸したお金のうち、どれだけ返ってこなかったかを計算し、その金額を予め積み立てておくわけです。あのたっっっかい利息はこの貸倒引当金にも一部使われています。これはどこの貸金業者も積んでおり、裏返して言えば、どこの貸金業者も貸したお金が返ってこないことを事実として受け入れているわけです。

しかも、貸金業者やクレジットを扱う信販会社は税制上、このお金を損金算入できる(積んだお金は税金がかからない!)そうです。平成23年にこの貸倒引当金制度は、損金算入できる範囲を縮減する形で改正されましたが、貸金業者や信販会社に関するものは維持されたようです。

とはいえ、支払いを滞納すると、貸した業者から電話がかかってきて返せ返せと言うわけですが、電話をかけているのは督促の担当者だからということに過ぎません。そのうちそれも止むわけですが。

とにかく、「貸したものは返さなければならない」というのは大変正しい考えだと思いますが、貸した方、特に貸金業者は案外そうも思っていない、という話です。この考えに取り憑かれて適切な対処ができなかったり、体調を崩す方が本当に後を絶ちません。

私としては、もーちょっと気楽に考えてはどうかと思っています。

 

約束の日 安倍晋三試論


現職の総理大臣について、勉強したいと思ったのは初めての経験でした。
戦後レジームからの脱却という大目標を掲げていたことに、恥ずかしながらこの本を読むまで知りませんでした。

第一次安倍内閣の誕生から辞任まで、マスコミが伝えなかった政権の有り様を見ることができます。
それを妨害するマスコミの姿も。
安部総理自身に攻めるところがないとみると、閣僚をのあら探しをし、選任責任を問うのは常套手段となりました。

何度も報道されたので今でも覚えていますが、不明朗な事務所経費を野党に指摘されて、「ナントカ還元水」の費用だと答弁する松岡農水大臣はその後、議員会館で首を吊った状態で発見されました。苛烈な報道を苦にして自殺したものと見られています。

一読の価値は充分ありました。
今後の安倍内閣をまた違った角度から見ることができそうです。とりわけ朝日新聞の報道には気をつけないとなあ。

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ティーアンドエスが自宅に訪問して取り立て


ここ最近増えている相談です。

突然ティーアンドエスという会社から、かつて滞納した借金に多額の延滞金を加え「最後通告」などと書いた督促状を送りつけられ一括返済を求められた、あるいは名を名乗らず「ティーアンドエスの人間ではない」と言う男が自宅にやってきてティーアンドエスへの一部返済を求めたり、返済計画をいついつまでに電話せよ、と言われた、という相談を立て続けに受けました。

相談者はかつてアエル、タイヘイ、GMOネットカードなどから借入れて滞納し、それから5年~10年程度経ってから、ティーアンドエスから取り立てを受けています。上記の会社とティーアンドエスの間には、クリバース、プロマイズという会社があり、最終的にテイーアンドエスが債権譲渡を受けています。ティーアンドエスは時効を迎えたような不良債権をサラ金から買い集めているようで、私が受任した件の半分以上は消滅時効が完成していました。
5年の消滅時効の期間を満了していれば、内容証明郵便で時効の援用をするだけで解決してしまいます。最後の支払日から数えて5年です。
期間満了前に裁判を起こされ、判決をとられていればまた起算日と期間は変わってしまいますが・・・
そういった事情がなければ元金を含めて借金を支払わなくても良くなります。

但し、時効の援用をする前に、借金の一部でも返済していると、時効期間はリセットされ、時効の援用はできなくなります。
ティーアンドエスはこれを狙っています。「1万円だけでもいいから」と執拗に一部弁済を求め、時効援用を妨害します。実際に支払ってしまった方もいました。私に連絡を頂いた前日に支払ってしまった方がおり、依頼者の方ともども大変悔しい思いをしました。

借りたものは返さなければ、というのはその通りだと思いますが、お金を貸したほうも5年も放ったらかしにしていたのも事実です。
5年を経過する前であれば、貸したほうが裁判を起こしていれば確実に勝つことができたでしょう。
それにも関わらず放ったらかしにしていたのは、貸していた方も回収が難しいと考えて諦めていたということです。
判決を取ったとしても、借主に強制執行できるような財産がなく、勤務先もわからないような場合には、どうにもなりません。
会計上、「回収不能」として処理していることもあるようです。

ティーアンドエスはそういった債権を書い集めて支払いの催促をして、だまし討ちのような形で時効援用を阻止しようとしているわけです。
時効を使って借金を帳消しにするのに、あまり遠慮をする必要がないように思います。

ティーアンドエスの「集金予告通知」


ティーアンドエスの件の続きです。

先日の記事では、最終支払日から5年以上経っていることが結構あるので、時効の援用を内容証明郵便ですれば終わってしまう、ということを書きました。しかし、もしも一部でも返済してしまえばこの時効の援用は使えなくなってしまうので注意が必要です。
先日の相談者は一部だけ支払ってしまいました。それは、下記の「集金予告通知」が本当に怖かったということでした。

相談者に「集金予告通知」なるものを送り、突然訪問して取り立てる、イヤなら下記口座に遅延損害金も含めて全額一括で振り込め、という内容を通知しています。
しかもティーアンドエスからの借入ではなく、別会社に対する借入の取り立てを行なっています。
下記はその通知の内容です。

貴殿は当方より再三再四に渡り送付しております通知に対し、何等誠意を示して頂けませんでした。従いまして、このまま同様の対応では任意に御支払頂けると考えられる余地が無いと判断するに至りました。そこで我々は貴殿に対する債権を訪問・集金による回収手続きに進めさせて頂くことになりました。現時点に於いては、集金対象者リストの作成、並びに費用・日数等の算定は終了し、地域によっては、既に集金対応を開始している所もあります。我々としては、穏便に解決を図ろうしておりましたが、貴殿にその意思は無い様でしたので、貴殿のご希望に沿い、突然の訪問により、交渉・回収を図ることと致しました。貴殿に誠意ある対応が無い以上、我々としては、このまま放置する訳にはいきません。事の解決に至る過程に於いて、訪問・集金に支障がある方は下記金額を下記期日までに一括にて御振込願います。 以上

おどろおどろしい文章で、読むだけでなにやら不安を煽られます。
ちなみに相談者はティーアンドエスから支払いの催促を受けるのはこの通知が初めてで、しかもかつての借金がティーアンドエスに譲渡されていることも初耳ということでした。

そうだとすれば、民法第467条1項により、ティーアンドエスは相談者に借金の譲渡されたから支払え、とは言えないことになります。元の借入先から相談者に、ティーアンドエスに譲渡したことを通知しないと、相談者に請求できません。
砕いて言うと、「ウチからティーアンドエスにあなたの借金を譲渡したよ。これからはティーアンドエスに払ってね。もうウチに払ってもダメだよ。」ということです。

まずはこの通知をしていたかどうかを確認していきたいと思います。

低収入でも生活保護でも成年後見制度を利用できる!名古屋市成年後見制度利用支援事業の改正について。


平成22年10月1日、名古屋市は、成年後見制度の利用支援事業の助成範囲を大幅に拡大しました。生活保護受給世帯や、一定の要件を満たす低収入の世帯の方など、この支援事業を利用することができるようになりました。

今までは、名古屋市長の申し立てのみに用いられていた支援事業の対象を、被後見人本人やその親族が申し立てを行った場合にも助成を利用できるようにしました。大きく分けると下記の2つの助成に分けることができます。

  • 申立費用の助成
  • 後見人等(成年後見人、保佐人、補助人)報酬の助成

申立費用の助成

助成の対象になる申立費用は下記の通りです。

  1. 申立手数料
  2. 登記手数料
  3. 郵便切手代
  4. 鑑定料
  5. 申立書の添付書類の取得費用

1.~4.は実際に家庭裁判所に支払った費用に限られます。助成の申立は後見等の開始審判の確定後ですので、一旦は申立人が費用の立て替えをすることになります。申立書の作成を司法書士に依頼した場合の報酬は助成の対象になりません。

後見人等(成年後見人、保佐人、補助人)報酬の助成

後見人等の報酬、後見監督人等(成年後見監督人、保佐監督人、補助監督人)の報酬を助成してくれます。助成の上限は後見人等、後見監督人等の報酬の合計して月額28,000円までです。但し、後見人等、後見監督人等が親族である場合はこの助成は使えません。

まだまだ様々な制約のある支援事業ですが、非常に良い改正だったと思います。利用すべき事案があればしっかり利用し、支援事業の必要性をより強く名古屋市に感じてもらいたいなあと思っています。

高齢者介護事業の経営者が入所者の財産を横領?経営者は別件で逮捕されたものの・・・


愛知県豊明市の高齢者介護事業者の「中日看護センター」の経営者、吉田ルリ子容疑者(70)が、入所者の残高証明書を自分名義に偽造し、名古屋市に提出して逮捕されました。新たに特別養護老人ホームの開設の申請の際に、自己の資産状況を証明するため、入所者の残高証明書を自分名義に偽造したということです。

この事業所では、少なくとも2007年6月からトラブルが絶えず、介護放棄などの虐待が常習化しているとして市に通報が相次いでいました。県と市が調査をしていたそうです。しかし経営者が調査に非協力的で、通報があっても事態を把握することが出来なかったようです。名古屋法務局は2009年3月、この事業所の経営者が従業員に指示し、入所者の手首をベッドに縛り付けていたほか、部屋の外から鍵をかけて閉じ込める虐待があったと認定。06年~08年の間に18人の入所者が死亡したことも明らかになりました。

しかしその後も改善は行われず、2010年9月には、経営者が名古屋市に特別養護老人ホームの開設を申請。さらなる事業拡大を企図していました。その申請の書類の中に、偽造した私文書があったことが今回の逮捕に繋がりました。

この事件の最も恐ろしいのは、経営者が入所者の財産をだまし取ったかどうかは、被害者が認知症のために立件が難しい、ということです。今回の逮捕容疑は私文書偽造です。私文書偽造に過ぎない、と言ったほうが正確かもしれません。入所者の財産を横領したとか、騙し取ったとかという容疑での逮捕ではないのです。このまま捜査が難航し、横領や詐欺容疑で立件ができなければ、認知症の高齢者から財産をネコババするのはやった者勝ちということになってしまいます。

認知症になったらどうやって財産を守るのか、どうやって生きるのか、ということを真剣に考えさせられました。

 

叩く、怒鳴る、水をかける…虐待12件を確認 和歌山・海南市の特養ホーム 県が改善勧告


認知症の高齢者が虐待を受けるケースがまた発生しました。

msn産経westより引用

「調査結果によると、虐待件数は12件で、虐待された人は7人。施設職員が入所者を叩いたケース(1件)のほか、怒鳴る、水をかける、高圧的な態度をとる、排泄の失敗を侮辱するなどの心理的虐待が11件にのぼった。虐待を行ったのは介護職員6人だった。」

この件は施設内の様子を隠し撮りしたことによって発覚したようです。特別養護老人ホームに限らず、施設内での出来事は非常に発見が難しいという問題があります。虐待の被害を受けていた方が認知症であることも問題を難しくしています。どういうことがあったのか、正確に説明できないことが、責任追及を難しくします。

虐待を行った者は介護職員でしたが、この点を熟知していたことでしょう。相手の無知につけこんだ最も忌むべき行為であり、批難を免れません。介護が重労働だった、賃金に見合わなかった、などの言い分はあるかもしれませんが、当然ながら入所者を殴っていいわけではありません。しかしながら虐待を行った者に刑事訴追を行うという報道は現時点で聞かれず、県からの改善勧告に留まっています。

こういった事件は明るみにでるのでしょうか?施設内を隠し撮りすることは相当に踏み込んだ行為です。施設の長は当然許可しないでしょう。また入所者は認知症なので、実質的に許可をすることもできません。まさに個人の判断で隠し撮りを行うしかありません。このような形での事実の露見は実際あまり期待できないところです。

こういったケースの防止にはやはり親族や後見人といった第三者の介在が重要だろうと思います。妙なあざが増えたとか、様子がおかしい、ということをいち早くキャッチすることです。私もイヤな考え方とは思っていますが、常に一定の疑いを持って見る、ということが肝要ではないかと思っています。