お葬式の費用は相続人の負担?


相続人でない親族が喪主となり、亡くなった方の葬式と埋葬をしたが、相続人がその費用を支払わなかったケース。

亡くなった方には子供がいたものの疎遠でした。親が入院したときの手伝いなどしておらず、危篤になったときも、予め葬儀の開催を断るなど関係は冷えきったものでした。一方の亡くなった方の兄弟は、入院の世話を行い、亡くなった方の葬儀を喪主として行うなど、自ら費用を負担して弔いました。

亡くなった方には遺産があり、第一順位の相続人である子供が相続したので、喪主をした兄弟がその子供に葬儀費用や埋葬費用など、およそ三百万円の負担を求めたが、子供は支払いを拒絶しました。亡くなった方の遺産を全て受け取りながら、葬儀費用等の一切の支払いを拒まれたため、兄弟から子供に対してその支払いを求める訴訟を提起した。

事案を単純化するため割愛したところもありますが、名古屋で起こったケースです。結論としては、裁判所は亡くなった方の相続人に、葬儀費用等の支払いを費用支払いを命じませんでした。葬儀費用は喪主が支払うものであり、相続人が支払うものではないという、従来の判例の立場を変えませんでした。

甲斐甲斐しく世話をした兄弟は浮かばれないわけで、結論としては受け入れがたい部分があるかと思います。しかしながらこのケースは、相続に関する準備を怠った結果とも言えるのです。

というのは、この兄弟の方が亡くなった方の遺産から葬儀費用を支払ってもらうことは可能でした。亡くなられる前に葬儀費用について合意があれば、です。亡くなられた方が認知症で、きちんと合意を残すことができないなどの事情があれば別ですが、そうでなければその合意を書面に残していれば遺産から費用を支弁してもらうことは可能でした。おそらく、亡くなられた方の意向にも沿うものであったでしょう。多くの高齢者は自らのお葬式の費用を意図的に残しておられます。

葬式の費用が遺産から出ると疑いなく思っておられたのかもしれません。しかし、残酷かもしれませんが、準備不足が招いたことを悲劇と言っていいのか、とも思います。遺言・相続の分野においては、準備は極めて重要です。亡くなってしまってからではできないことがたくさんあります。

相続は一度切り


司法書士もそうですが、士業というのは、やる必要はあるが滅多にやらない法律事務を、本人に代わって最も有利になるよう行う、という仕事なんだろうと思っています。その法律事務は、弁護士さんは訴訟でしょうし、税理士さんは税務申告でしょう。司法書士は不動産登記や会社設立ということになろうかと思います。
それらに加えて、亡くなった方の相続の手続きも同様だろうと思っています。

専門家以外は滅多にやらないため、ノウハウがなく余分な苦労や出費が嵩み、ついには諦めてしまうこともあると思います。また手続き後にトラブルになりうる種に気付かずに手続きを終えてしまうこともあるでしょう。かくいう私自身も税務申告は開業以来、税理士さんにお任せしています。売上や費用の計上くらいはできますが、それを税務上正確に仕分けるといったことはわかりませんし、正しく計算すれば支払わなくていい税金を支払うことにもなりかねないと思っているためです。後になって「こうすれば良かったのに…」という後悔はしたくありません。

相続財産承継業務はそのような観点から開発しました。私は不動産や会社を扱う仕事柄、相続に関わる様々な悲劇を見てきました。法律家に相談に来る段階というのは、もう手遅れになっていることがほとんどです。それは実際にトラブルが発生してから相談にいらっしゃるためです。
それでも事後の策を検討しますが、「相続の時、これやっとけば良かったのに…」と思わずにはいられません。

相談を受けるたび、なんとかしたいと思っていましたが、相談が来るまで待っているから手遅れになるんだ、と気がつきました。相続に対して積極的に関わり、生じうる問題点を予測し対策を講じる、というのが相続財産承継業務のミッションにしました。

相続を経て、遺された遺族が対立するのを防ぎたいと思っています。相続に関しては、予防に勝る良薬はありません。初回相談は無料です。お気軽にご連絡下さい。