父親が2人の兄弟のうち、長男にすべての財産を相続させる旨の遺言を書いたが、親より長男が先に死亡し、その後3ヶ月後に父親が亡くなった場合に、遺言の効力はどうなるのか?という事案でした。
①遺言ですべての遺産を相続する予定だった長男に代わり、代襲相続により長男の子が父親(祖父)の財産を相続するのか。
②あるいは遺産を相続する予定だった長男が亡くなっているので、その遺言は効力を失い、法定相続となり長男の子と次男が半分ずつ相続するのか。
わかりやすくするため実際の事案より少し単純にしていますが、平成23年2月22日最高裁判決では原則、②の考え方となることを明らかにしました。
『「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから,遺言者が,上記の場合(筆者注:推定相続人が被相続人より先に死亡した場合)には,当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り,その効力を生ずることはないと解するのが相当である。』
本件では上記の特段の事情がなかったということです。長男に全部相続させるとしか書かれていなかったようです。まさか長男が先に亡くなるとは思っていなかったということなんでしょうねえ。しかし遺言は亡くなった時に効力を発生するものですので、あらゆる事態を想定しておく必要があります。
逆に言えば、遺言に「私が死ぬ前に長男が亡くなったら、長男の子に相続させる」とはっきり書いておけば、長男の子が相続できるということです。上記の「特段の事情」ですね。一言書き加えるだけで、結果は全く変わってしまいます。